まだ冷たい風は残っているものの桜の花がちらほら咲き始めた3月26日、私たちは東京都あきる野市にて行われた「第五回 法林寺琉球芸能の会」に出演した。会場となったのは臨済宗南禅寺派法林寺の本堂である。ベネズエラ音楽の楽団である私たちEstudiantina Komaba(以下EK)が琉球芸能のイベントに出演する機会を得たきっかけは、2014年9月にEKが行った沖縄ツアーだ。ツアー中、沖縄県立芸術大学で琉球芸能を行っている学生有志の方々(現・「蔵の会」メンバー)に大変お世話になった。その中の一人である山田和孝さんが今回の「法林寺琉球芸能の会」を企画してくださったのだ。お寺の本堂というめったにない会場で演奏できたのも、山田さんのご実家がここ法林寺だったおかげである。13時半に開場した堂内は、14時に開演する頃にはおよそ80名のお客さんでいっぱいになった。お客さんのほとんどはよくお寺にいらっしゃる近所にお住まいの方々だったようで、法林寺が地域の人々から愛されているのを感じた。

「本嘉手久」を踊る吉田真和さん
「本嘉手久」を踊る吉田真和さん

 会は山田さんと、同じく「蔵の会」メンバーである又吉恭平さんの演奏によって幕を開けた。最初の演目は、演奏会や式典の幕開けに演奏されることが多いという「かぎやで風節」と「特牛節」。続いて華やかな衣装に身を包んだ吉田真和さんによる琉球舞踊も加わって「本嘉手久」が披露された。続けて「中村渠節」が演奏され、会場はまるで暖かい沖縄の地であるかのような雰囲気に包まれたところで、私たちEKの出番となった。コンサート一曲目の定番となりつつある「モリエンド・カフェ」でスタートしたEKの演奏は、曲ごとに簡単な説明を交えながら進行した。まず、ホローポから「トライゴ・ポルボ・デル・カミノ」、「パハリージョ・ベルデ」の2曲。続いて、石油産出国ベネズエラの内情について触れつつメレンゲ「オロ・ネグロ」を演奏した。ノリノリの「エル・ベサオール」で会場が温まったところで、お客さんにもコーラスに加わっていただき「グアヤナ・エス」で盛り上がった。最後の曲「トラヴェシーア」では、山田さんと又吉さんにもボーカルとして参加していただいた。この曲は、2014年の沖縄ツアーのときにEKと山田さん・又吉さんとの間で「いつか一緒に演奏しましょう」と約束した思い出の曲である。もとはブラジルの楽曲だったものだが八重山民謡の第一人者である大工哲弘さんによってカバーされており、南米と沖縄をつなぐ架け橋のような曲といえる。

オロ・ネグロ」。演奏者をコの字型に囲む客席になっていて、お客さんとの距離が近く、一人ひとりの顔を見ながら演奏できた
オロ・ネグロ」。演奏者をコの字型に囲む客席になっていて、お客さんとの距離が近く、一人ひとりの顔を見ながら演奏できた

 私たちの出番のあとも琉球芸能の発表が続く。音楽の教科書にも載っていた(と記憶している)『てぃんさぐぬ花』を含む『沖縄わらべうたメドレー』に、山田さんが創作された『久原節』。最後に再び吉田さんが登場し、『むんじゅるう』が披露された。演奏後にはお楽しみ抽選会も行われ、盛会のうちに「第五回 法林寺琉球芸能の会」は終了した。

会全体を企画・運営してくださった山田さん、法林寺のみなさん、共演してくださった又吉さん・吉田さんにこの場をお借りして感謝の意を表したい。アットホームな雰囲気でとても楽しい会だった。

終演後、共演者のみなさんと。前列左から又吉さん、山田さん、吉田さん
終演後、共演者のみなさんと。前列左から又吉さん、山田さん、吉田さん

(文 N.N.)