ゼミ生の声

 8月2日(土)、第6期のゼミ生を主体とする「ラテンアメリカ音楽演奏入門ゼミ成果発表コンサート2014」が開催されました。夏学期中ゼミ生が練習を続けてきた6曲、そしてゼミ修了生からなるエストゥディアンティーナ駒場(EK)が奏する6曲のベネズエラ音楽で、会場は熱気に溢れました。過去最多の観客動員数を誇る、大成功裏に閉幕した今回のコンサート――ご来場いただいた皆様、また寄付をしてくださった皆様のお蔭でございます。厚く御礼を申し上げます。

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 ベネズエラの国民音楽・joropo(ホローポ)のリズムに乗って、Campesina(村娘)からコンサートがスタート。今回は吉沢陽子さんの手ほどきを受けたゼミ生がarpa(アルパ:ベネズエラのハープ)を奏で、重厚なCampesinaが生まれました。
 続いてもjoropoの1曲、Mi llano es un paraíso(わが平原は楽園)。石橋先生による「ホローポレクチャー」で、観客の皆様も手拍子がjoropoに。会場には、平原のカウボーイの叫び、¡¡Ay!!(アイ!!)が響き渡りました。
 今度は、valse(バルス:ベネズエラに土着化したワルツ)のComo llora una estrella(星の涙)。悲しげなバイオリンの音で始まり、トランペットの音も愁いを帯び、Cuatro(クワトロ:ベネズエラの4弦ギター)の合奏が哀調を掻き立てます。
 リズムは再びjoropoに戻り、Amalia Rosa(アマリア=ロサ)の大合唱へ。次々に、しかも早口言葉で、たくさんの女性の名前が登場するというドタバタした歌……早口の歌詞が揃うか否かに楽団の腕が試される一曲でもありますが、ゼミ生の息はピッタリです。

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 ここからはEKメンバーが登場します。我らがベネズエラ音楽のコーチにしてCuatroの大家でもいらっしゃるMaurice Reyna モリス=レイナと、有賀竣哉のデュオによるLa partida(別離)。2人のcuatroの掛け合いが、情熱的でした。
 EKの2曲目はQuirpa(キルパ)。かつて実在したアルパ奏者のあだ名を冠するこの曲は、平原のjoropo。Quirpaさながらの伊達男の熱唱で、ステージ上が平原に生まれ変わったかのようです。
 荒々しい平原の歌から一転して、次はFulía de Cumaná(クマナのフリーア)。ベネズエラで5月に行われる「十字架祭」で歌われる伝統曲です。静かな、聖なる響きに会場内が包まれました。
 今度は、ベネズエラのmerengueの曲でEl norte es una quimera(北はキメラ)。1930年代の、ベネズエラにとっての”北”即ち合衆国を風刺した1曲。ドラムが刻む5拍子のリズムが軽快であり、サックスとトランペットの音色も洒落ています。
 そして歌はMedia luna andina(アンデスの三日月)に移ります。しっとりと落ち着いたメロディーに乗せて、愛する人への思いの丈を歌います。¡¡Amor!!と愛する人を呼びかける切実な声に、思わず聞いていて胸が熱くなります。
 EKの演奏のラストを飾るのは、Polo(ポロ)。El cantar tiene sentido, entendimiento y razón(うたうからには意味があり、思いがあり、わけがある)――歌う営みの本質を捉える歌詞を、本ゼミ教員自らが熱唱しました。
 ステージ上には再びゼミ生が戻り、Moliendo café(コーヒールンバ)の演奏へ。サルサの効いたノリの良いアレンジに、歌手も、クワトロ隊も、パーカッションも、ホーンセクションも、そして会場も最高潮に達します。

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 コンサートのフィナーレはGuayana es(グアヤナ・エス)。舞台上の一人一人が鳴り物を手に取り、観客の皆様からの手拍子も止まらない、お祭り騒ぎ。¡Guayana es, Guayana es…!と会場全体で大合唱しました。
 ¡Otra, otra!(アンコール!、アンコール!)の声にお答えして、Alma llanera(平原の魂)。ベネズエラ第2の国歌とも言われるこの曲を唱和して、ラテンアメリカ音楽に浸るコンサートはお開きとなりました。

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 ゼミ当初は、半年後にコンサートで演奏している自分を想像できませんでしたが、当日はなんとクワトロを弾きながらしかも歌っている自分がステージ上にいました。演奏者自身、驚きです。
 楽しかったゼミも、盛り上がったコンサートも「あっという間」に終わってしまいました。けれども、これから私たち第6期のゼミ生は、エストゥディアンティーナ駒場のメンバーとして、今後も長くラテンアメリカ音楽を続けていきます。東大の学園祭(五月祭・駒場祭)など演奏する機会はたくさんあります。ぜひ次回も、皆様とご一緒にベネズエラ音楽で素晴らしい時間を過ごせたらと思います。今後とも「ラテンアメリカ音楽演奏入門ゼミ」そしてエストゥディアンティーナ駒場をよろしくお願いします!

小川雅貴/教養学部2年

観客の方からの声

 「ラテンアメリカ音楽演奏入門ゼミ」が発足して6年目。6度目の成果コンは、豊富なレパートリー、飽きさせない構成、例年にも増して色彩を増したアンサンブルと、進化し続けるラ米ゼミ/EKの姿を存分に見せるものとなった。一曲目「村娘」から息のあったアンサンブルと堂々とした歌が躍動する。クアトロ、バンドーラ、マラカス、(かねてから念願の)アルパといったベネズエラの民俗楽器に、バイオリンやトランペット、フルートにファゴットといった比較的ポピュラーな楽器が絶妙なアンサンブルを醸し出す。洗練された小編成から迫力の大編成まで、飽きさせないあっという間の1時間半。まだ聴き足りない、もっとこの音楽を堪能したいと、「Otra!(アンコール!)」のコールをかけながら考えていた。東大駒場を拠点として、ベネズエラの文化と音楽が「広さ」と「深さ」を伴って浸透しつつあることを改めて感じさせる充実の内容だった。この成果コンでデビューしたニューカマーたちの門出を祝福したい。