2015年10月30日から11月1日にかけてEKは2泊3日の鳥取へのツアーを実施しました。ツアー中に、当楽団の主催教員である石橋純が、鳥取大学国際交流センターに招聘され、楽団員2名とともにレクチャーコンサートを行いました。

コンサートでの演奏風景
コンサートでの演奏風景

(1)レクチャーコンサート報告

 ツアー2日目の10月31日(土)に、鳥取大学地域学部サテライトキャンパス SAKAE401にて、鳥取大学国際交流センター主催のレクチャー・コンサート「南米ベネズエラの音楽と文化」を行い、石橋純が講師を、エストゥディアンティーナ駒場(以下EK)のメンバー2名が演奏を務めました。
 石橋の講義では、ベネズエラの政治、経済と文化の概説、南米におけるセレナータの風習やホローポのリズムについての解説を行いました。
 コンサートは「コーヒールンバ(Moliendo café)」からはじまり、ベネズエラの国民舞踊であるホローポの「エロルサの祭り(Fiesta en Elorza)」と「キルパ(Quirpa)」を演奏しました。続いてベネズエラ風ワルツから2曲、愛する人への思いを歌う「君の名は何処から(¿De dónde viene tu nombre?)」と、こちらは対照的に恋愛が破局を迎えた後の「恨み節(Maldicíon)」をお届けしました。そして5拍子の舞踊音楽メレンゲに合わせユーモアたっぷりに社会を皮肉る「黒い金(Oro negro)」、伝統的なコード進行に船乗りの思いを乗せた「ポロ(Polo)」を披露させていただいた後、「ハローウィーンが終わればクリスマスのシーズンですね。」という石橋の前置きから、ベネズエラにおけるクリスマスの歌の贈り物であるアギナルドの3曲(歌おう、歌おう/ ディンディン /カルパノのアギナルド)をメドレー形式にして観客のみなさまにプレゼントしました。最後にカリプソの「グアヤナ・エス(Guayana es)」を観客のみなさまの手拍子に合わせてお送りし、コンサートは終わりました。コンサート後には、観客の方へのクアトロやマラカスの演奏方法のレクチャーなどの交流を、短い時間でしたが行うことができました。
 今回のコンサートは演者3人の小編成で合計9曲演奏するという、普段のEKのコンサートと比べると珍しい形態であったために、EKの2名とも今までEKでそれなりに演奏経験を積んできたとはいえ息を合わせるのに苦戦しました。しかし、観客のみなさまの熱心さを帯びた視線を感じながら、なんとかしっかりと演奏しきることができました。
 今回のレクチャー・コンサートでは、鳥取大学国際交流センター准教授のグラシエラ先生、同大学産学・地域連携推進機構の前波先生らにたいへんご尽力いただきました。心より感謝申し上げます。

(文責:韓智仁)

(2)ツアーレポート「初めての鳥取、演奏前夜」

 私たちのツアーの醍醐味は、演奏はもちろんですが、行く先々の食や人との出会いにあるといっても過言ではありません。
10月30日金曜日、鳥取ツアー1日目。演奏会場の下見・リハーサルを済ませ、私たちを鳥取にお呼びくださったクラビオト先生、前波先生と共に、地元の小料理屋を訪れました。日頃庶民的な料理ばかり食べている私にとっては、いつもより上品なお料理を少しだけ緊張しながら口に運びました。日本海側の地方で有名な料理といえば「のどぐろ」。ここでは天ぷらにしたものをいただきました。ほどよく油がのっており、口の中に甘みがふわっと広がる一品でした。地元の食材はもちろん、地酒も堪能しました。鳥取の酒の多くは濃醇甘口と聞きます。ここでいただいた冷酒も、米の味がぎゅっと感じられるものでした。
 鳥取の食材・酒でお腹を満たして店を出ると、先ほどとはうって変わったような寒さを感じました。その日はちょうど、日本列島に寒波が押し寄せた時だったのです。薄着の私たちは、寒い寒いと言いながら、前波先生が勧めるカフェを訪れることにしました。「ここです」と指されたのは、洒落た門構えの店。「Book Cafe ホンバコ」という、古い店舗をリノベーションして作られたカフェでした。「ホンバコ」という名前の通り、店内の壁にはいくつもの小さな本箱が設置されています。個人個人が自分の本箱におすすめの本を置き、カフェを訪れた人は好きな本を手にとり、さらに、しおりに感想を各ことで知らない人と感想を共有できるという仕組みなのだそうです。私たちは、古い建物らしい急な階段を上った先の部屋で腰を下ろし、珈琲を片手にしばし団欒することにしました。
 鳥取は言わずと知れた人口の少ない町です。鳥取に移り住み県内に2つしかないという大学のうちの1つで教鞭をとっている先生方と、教員石橋がいる中で、話題は次第に地域における大学のあり方、教員が果たせる役割などに及びました。このカフェは「本で人と街が繋がるきっかけを」との理念の元、元々喫茶店だった店舗をセルフリノベーションして、2015年5月にオープンしたそうです。地元鳥取にUターンし、町を盛り上げようと行動している店長さんの熱量を感じました。一方、地域を活性化させようとする取り組みが、現状、あるコミュニティの人々の中だけで完結しやすいのではないかということが話にあがりました。若者の熱量を内輪にとどまらせないようにする面で、教員である自分が関わっていけないか。先生がそのようなことをおっしゃいました。社会をよくしようという動きを外へ外へと広げ、人を巻き込んでいく難しさを再確認するとともに、まだ打ち手はあるのではないかという可能性を感じた夜でした。

(文責:立花美幸)

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